当院は、鳥取県東部における地域がん診療連携拠点病院です。県の拠点病院である鳥取大学医学部附属病院と連携、協働し、がん診療を行っております。

 手術、放射線治療、薬物療法から緩和ケアまで、患者さんおひとりおひとりに対する最適で最良のがん診療を提供させていただきます。



 私たちは先進医療を追求し、最適、最良の医療が提供できるよう、最善を尽くします。また、積極的な抗がん治療ができなくなった患者さんに対しては、緩和ケア病棟での患者さんとご家族に寄り添う医療を提供させていただきます。


 先進医療、緩和ケアともに当院で対応が困難な場合には、県拠点病院あるいは地域の緩和ケア提供施設と連携し、治療施設、療養の場を提供させていただきます。


 最近のがん治療においては、患者さんおひとりおひとりが持っておられる身体の機能を温存しつつ治療を受けていただく「低侵襲治療」が主流となっています。当院においても、外科領域におけるロボット手術や放射線治療における強度変調放射線治療を導入しており、身体を傷つけることなくがんの根治療法を行うことができるようになっています。


お知らせ

第3回患者体験調査 ご協力のお願い (pdf:353KB)


手術療法

 当院では従来の開腹、開胸手術に加え、内視鏡手術(腹くう鏡や胸くう鏡を用いた手術)をがん治療として積極的に行っています。内視鏡手術は根治性を担保しながらも、“きず”が小さいため美容に優れ、手術後の痛みが少なく、術後肺炎などの感染症を起こすリスクが低いという長所があります。

 また、2019年より手術支援ロボット(ダビンチXi)が導入されました。食道がん、胃がん、直腸がん、結腸がん、前立腺がん、腎がん、肺がんに対してはロボット支援下内視鏡手術が可能となっています。ロボット手術は内視鏡カメラや手術器具を人の手ではなく、手術支援ロボットのアームで持ちます。そして、離れた位置から操縦席に座った医師がコントローラーを操作してこのアームを動かして手術を行います。通常の内視鏡手術と比較し、ロボットアームの多関節機能、手ぶれ防止機能、3次元立体画像などにより、より精緻な手術が可能となっています。難しい手術が行いやすく、術後合併症の危険性も減ることが期待されています。

手術支援ロボット「ダビンチXi」 ロボット支援下内視鏡手術


画像下治療(IVR)

 IVR(インターベンショナルラジオロジー:画像下治療)は、画像診断装置を用いて、画像誘導下に、低侵襲的に治療を行う手技のことを指します。従来は血管内治療あるいは低侵襲治療とも呼ばれていましたが、現在は画像下治療と呼ばれています。外科の領域でも侵襲の大きな手術をすることは減ってきており、IVRは治療効果に比較して治療に伴う侵襲が少ないという特徴があります。

 IVRの代表的な手技としては、古典的には肝細胞がんに対する肝動脈塞栓療法が挙げられますが、その他にも管腔臓器の狭窄閉塞を改善するステント挿入術や、がんによる体腔液貯留に対する経皮的ドレナージ術等があります。QOL(生活の質)が重視されるがん治療における応用範囲が広く、外科療法、放射線療法および化学療法と並ぶ、がん診療の4本目の柱となり得る治療です。

 また、がんによる血管破綻に伴う出血をきたしたような場合、血管内治療による止血術も積極的に行っております。特に腹部危機的出血の場合は救急集中治療科による全身管理の下で対応しており,鳥取県東部では初となるステントグラフト留置術も行いました。
 当院では、血管撮影装置と64列CT装置とが一体となったIVRに特化したIVR-CT/Angioシステム(IVR-CT)が整備されており、2名のIVR学会専門医が高度な治療に当たらせていただきます。


ステント留置前
ステント留置前
ステント留置後
ステント留置後



ステント留置前
ステント留置前
ステント留置後
ステント留置後

放射線治療

 放射線治療の特徴は、苦痛が少なく、臓器の機能や形態の温存ができ、低侵襲であることと、外来通院で治療が可能であり、仕事や日常生活を維持しながら治療できることがあげられます。
 2018年12月の新病院の開設に併せ、当院には高精度放射線治療装置TrueBeamが整備されました。この装置によって、腫瘍に対して色々な方向から放射線を当てることができ、線量を病変に集中させて周囲の正常組織へは減らすことができる定位放射線治療あるいは強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)を行うことが可能となりました。

 一昨年度からは肺がんに対する体幹部定位放射線治療を開始しておりますが、今年度より放射線治療専門医が2名体制となり、当院でもIMRTを行うことが可能となりました。IMRTは、腫瘍のみに放射線を集中して照射し、周囲の正常な臓器への照射は避けることができ、合併症を軽減しながら根治性を高める高精度な放射線治療ができるようになりました。前立腺がん、頭頚部がん、肺がんを始めとして多くのがんがその治療対象となり得ます。

 これまでは県内でIMRTを行うことができるのは鳥取大学医学部附属病院のみでしたが、鳥取県東部においても、県民の皆様により安全で適正ながん治療を提供することができるようになりました。
 また、放射線を出す元素である放射性同位元素やこれを組み込んだ薬剤を身体に投与(内服もしくは注射)し、がんの治療を行う放射性同位元素内用療法(核医学治療)も行っております。今回、新しい内用療法として神経内分泌腫瘍に対する「ルタテラ内用療法」も開始が可能な状況となりました。通常の治療でも腫瘍が増大してくる神経内分泌腫瘍に対する新たな治療法として本治療法は患者さんにとって福音となり得るものと思われます。

強度変調放射線治療
放射線室スタッフ

薬物療法

1.がん薬物療法とは

がん薬物療法とは がん薬物療法とは、主にがんに対する全身治療です。細胞障害性抗がん薬、分子標的治療薬、ホルモン薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用いてがん細胞の進行を抑制する治療の総称です。がんの治療では、薬物療法だけではなく、手術や放射線治療と組み合わせて行われることもあります。

 がん薬物療法の目的は大きく分けて2つあります。1つは手術や放射線治療と組み合わせて(一部のがんには薬物療法単独で)「完全治癒を目指すこと」、もう1つは治癒は目指せないもののがんを小さくしたり進行を抑制したりすることによって患者さんの「QOL(生活の質)を改善すること」です。一部のがんでは、免疫チェックポイント阻害薬の出現により、完全治癒はできなくとも、長期にわたり病気の進行を抑える事も期待できるようになってきました。

 近年のがん薬物療法の進歩は目覚ましく、治療選択肢が増えたり、治療期間が長くなったりしています。また支持療法(制吐剤などの副作用対策)の進歩や副作用の少ない薬剤の登場などにより、患者さんお一人おひとりの体質や環境、ライフスタイルにあった、最適な治療を選択できるようになってきています。

2.当院薬物療法部門の役割

(1)レジメンの審査・登録
 レジメンとは、がん薬物療法における抗がん薬や生物学的製剤、輸液、支持療法薬などを組み合わせた時系列的な治療計画を言います。抗がん薬の投与量、投与スケジュール、治療期間などが記載された治療計画書になります。当院では、医師、薬剤師、看護師、管理栄養士によりレジメンの安全性・妥当性・エビデンスを審査し、承認されたものだけを院内で使用できるように登録しています。登録したレジメンのみを使用することにより、標準治療を安全に受けられる環境を整えています。


(2)対象となる主な疾患
(悪性腫瘍)
乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、造血器悪性疾患、腎臓泌尿器科系腫瘍、婦人科系腫瘍、肝・胆道系がん、脳腫瘍、頭頸部がん,皮膚腫瘍、骨軟部肉腫、原発不明がん
(非悪性腫瘍)
クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチなど

当院で登録されているレジメン一覧へ(リンク)


(3)外来治療室の運営
がん薬物療法は、入院でも外来でも行われますが、最近では副作用のより少ない治療薬が増えたり、合併症・副作用を抑える薬剤の進歩などにより、外来で治療することも増えています。当院では外来治療室の運営を行っており、専任の医師、看護師、薬剤師たちがチームを組み、各診療科の主治医と密接に連絡を取りながら、安全な化学療法を追求しています。

外来治療室へ(リンク)


ゲノム

 がんの発生には様々な遺伝子の異常が関与していることが知られています。肺がんにおけるEGFRや、慢性骨髄性白血病におけるBCR/ABLなどをはじめとする遺伝子変異は、それらの阻害剤によって従来の一般的な細胞傷害性抗がん薬よりも高い治療効果が認められています。標準治療となっているものも多数あり、様々ながん種で現在のがん薬物療法の中心的な存在になっています。

 これらの検査の一部は従来から保険診療で行われてきていましたが、がんの種類によっては分子標的治療のための遺伝子検索に保険適応の無いものもありました。また、一つの検査で調べられる遺伝子は一つであったため、網羅的に遺伝子の異常を検索することは困難でした。

 がん遺伝子パネル検査とは、患者さんの腫瘍組織や場合によっては末梢血を採取し、そのがんの原因となっている遺伝子を検索する検査です。
 現在、国内にはがんゲノム医療中核拠点病院が12施設、がんゲノム医療拠点病院が33施設、がんゲノム医療連携病院が188施設存在します(令和4年9月時点)。ゲノム医療は、本邦では令和元年6月より保険適応となり、当院も同年10月よりがんゲノム医療連携病院の指定を受け、岡山大学病院を中核拠点として連携するかたちで検査が可能となっています。

 がん遺伝子パネル検査では、次世代シークエンサーという技術により一度の検査で網羅的に多数の遺伝子を検索できます。その結果によって治療に結びつく遺伝子異常があるかどうか、推奨できる治療があるかどうかを、岡山大学病院とテレビ会議で検討した後に、患者さんへ結果の説明と推奨できる治療がある場合はその提案をさせていただきます。

 しかし、残念ながら現段階では保険診療としてすべてのがん患者さんにこの検査を行うことはできません。 検査の適応となるのは、
(1)進行した固形腫瘍(がん腫や肉腫)であること(血液腫瘍は検査適応外です)
(2)標準的な治療が終了、あるいは終了の見込みであること(標準治療のない希少がんなどは除く)
(3)全身状態及び臓器機能などから、遺伝子パネル検査の後に化学療法の適応となる可能性が高いと判断される患者さんであること(当院では検査からおおむね3ヶ月以上の生存が期待できることを目安に)
を満たす場合です。
 またこの検査を行っても、治療標的になる遺伝子異常が検出されないことも多く、これまでのところ治療に結びつく確率は10%弱程度です。

 ご自身ががん遺伝子パネル検査の適応かどうかに関しては、まずかかりつけの主治医にお尋ねください。
また検査に関してご不明の点がございましたら、当院がん相談支援センターへお問い合わせください。
問合せ先:0857-32-8181(がん相談支援センター)

がん種別遺伝子パネル検査数がん遺伝子パネル検査とは
がん遺伝子パネル検査を検討しておられる方向けに、
国立がん研究センター内に設置されている「がんゲノム情報管理センター」が
作成した情報コンテンツを、許可を得て掲載させていただいております。


がんゲノム情報管理センター作成の動画



緩和ケア

緩和ケア病棟へ(リンク)



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