特集/もっとつながり、共に生きる ~障がい者の情報アクセス推進~

  障がいのある人の情報取得や意思疎通の環境を整える「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が、5月に成立しました。県では便利なICT(情報通信技術)機器の活用や支援体制の強化を進め、誰もが生き生きと暮らすことのできる社会を目指します。
鳥取聾学校幼稚部の子どもたちの写真
手話をしながら歌う子どもたち。さまざまな体験を通して学び、日々成長している(鳥取聾学校幼稚部)

視覚障がい者へのICT機器購入支援

購入額の2分の1を補助します
(視覚障がい者が情報を取得しやすくなるための補助機能を備えたもの、それぞれ上限あり)
●パソコン
●スマートフォン
●タブレット端末
●拡大読書器
●プレクストーク(デジタル録音図書の再生機器)
●ウェアラブル端末

ICT機器で生活豊かに

  真新しいノートパソコンの画面上には見やすいように白黒を反転したエクセルの表や、大きく表示されたマウスポイント。「USBはここに差します」「カーソルはこの位置に合わせて」―。視覚障がいのある諸家(もろが)昌司(まさし)さんは、倉吉市内の自宅に派遣された社会福祉法人鳥取県ライトハウス点字図書館(米子市)の情報支援員の丁寧な指導を受けていました。
  諸家さんは、県が6月から視覚障がい者を対象に始めたパソコンなどの導入支援事業を利用してノートパソコンを購入。福祉団体の役員や相談員を務めるようになったことから、パソコンで情報収集や事務処理を行いたいと購入を決断。助成も大きな後押しになりました。
  もともとデスクトップパソコンを所有していましたが、操作を教わっていた友人が5年前に亡くなってから使わなくなっていました。諸家さんは「周囲に教えてくれる人がいないと、パソコン操作の習得は難しい」と打ち明けます。
  今は月1回、ライトハウス点字図書館の情報支援員の指導を無償で受けています。諸家さんは「視覚障がい者への指導法をわかっている支援員が来てくれてありがたい。便利に使いこなせるようになりたい」と意欲を燃やしています。

マンパワーと最新の技術に期待

  県は障がいがあっても出掛けやすく円滑なコミュニケーションが可能な社会の実現に向け、さまざまな取り組みを進めています。
  視覚障がい者の買い物や通院などをサポートする同行援護従事者は不足する状況が続いています。支援を受けられないため、遠方の総合病院を紹介された一人暮らしの当事者が受診を先延ばしする事態も生じています。
  県では今年度から、同行援護従事者養成研修(都道府県主催研修を除く)の受講料の一部助成を行い、人材確保を後押し。福祉系学科のある高校や専門学校を直接訪問して、同行援護制度の紹介や周知も行っています。
  また、障がい者のICT相談窓口の設置や公共施設への遠隔手話サービス導入、視覚障がい者を安全に誘導する信号機の設置などを計画。手話を読み取って言語化する機器の開発に向けた民間企業の実証実験にも協力しています。

希望を持てる人生に

諸家(もろが) 昌司(まさし)さん
諸家昌司さんの写真

  3年前からスマートフォンを使い始めた諸家さん。音声で必要な情報を検索したり、見えにくいものを写真に撮って拡大しルーペ代わりに使用したりと、今では生活に欠かせない存在になっています。仕事場では拡大読書器を利用、パソコンを新たに購入するなど、ICT機器の活用に積極的に取り組んでいます。生まれつき遠くが見づらい弱視ですが、「昔と比べるとさまざまな技術のおかげでとても過ごしやすくなった」と笑顔を見せます。
  しかし、買い物の際の商品の値札やバスの時刻表の表示が小さくて見えづらいなど、まだまだ不便なことはあるため、さらなる技術革新を期待しています。
  また、特別支援学校などでのICT活用教育がしっかりと提供されることを願います。「技術で補完すれば障がい者の就労の幅が広がり、結婚などへの意欲にもつながってくる。希望の持てる人生にするために、誰もが利用できる技術であってほしい」と話していました。
パソコンを操作する諸家さんと妻則子さんの写真
妻の則子さん(左)と一緒にパソコンを操作する諸家さん

拡大読書器を使っている写真
細かい文字を読むときに活用している拡大読書器

県の今後の取り組み

最新技術と人材活用で便利に出掛けやすく!
■障がい者ICT相談窓口の設置
  本人や家族などを対象に、ICT関連の相談対応や機器の貸し出し、ボランティア派遣を行います。
■ICTで公共施設の情報アクセスを向上
  遠隔手話サービスや、音声認識で文字を表示するタブレット端末の配置を公共施設に拡大。手話を言語化する技術開発の実証実験にも参加しています。
■信号機への歩行者支援装置(高度化PICS)導入
  スマ-トフォン等に歩行者信号の交差点名や信号の色を音声や振動で提供するシステムを鳥取、米子両市2カ所の信号機に設置します。
■同行援護従事者の確保・育成
  視覚障がい者の買い物や通院など日常的な外出をサポートする同行援護従事者の確保と育成を図ります。

手話言語国際デーのブルーライトアップ

  9月23日の手話言語の国際デーを記念し、全世界でブルーライトアップを実施。「手話言語の聖地」である鳥取県でも、県内数か所で行います。

【問い合わせ先】 県庁障がい福祉課
電話 0857‐26‐7154 ファクシミリ 0857‐26‐8136





きこえない・きこえにくい子どものサポートセンター開所 ― 親子に切れ目ない支援を

  「きこえない・きこえにくい子どものサポートセンター」(愛称・きき)が7月、鳥取市に開所しました。聴覚障がい者やきこえない子どもの子育て経験者が支援員を務め、悩みや不安に寄り添います。
  難聴は早期に発見して適切な療育を行うことにより、自立した生活を送るために必要な言語・コミュニケーション手段の獲得につながるといわれています。同センターが学校や行政、医療などをつなぐ中核機関として、子どものきこえに不安を抱える保護者の相談先となり、適切にサポートします。また、福祉と教育が連携する協議会を設置。乳幼児から大人になるまで切れ目ない支援を提供します。
  同センターは、県聴覚障害者協会が県から委託を受けて運営します。各都道府県で整備が進む聴覚障がい児支援機関で、当事者団体の運営は全国初。当事者や聴覚障がい児の子育て経験者、手話通訳者の姿を実際に見てもらうことで、子どもや保護者が将来を考えたり子育ての見通しを立てたりする上でのロールモデル(手本)になると考えています。
開所式の写真
「拍手」の手話で祝う開所式の出席者

キッズスペースの写真
キッズスペース

相談室の写真
赤ちゃん連れでも利用しやすい相談室

「みんな笑顔で」正しい情報伝えたい

聴覚障がい児の子育て経験を持つ「きき」支援員
山中(やまなか) (かおる)さん
山中薫さんの写真

  「一番伝えたいのは『大丈夫』ということ。コミュニケーションの方法が違うだけです」
  優しい笑顔で語る山中さん自身、きこえない子どもを育てた経験があります。まだ手話への理解が進んでいなかった時代。情報は得にくく手探り状態でしたが、周囲の支援を受けながら前向きに子育てに取り組んできました。
  ショックを受けて暗い顔をしている保護者と出会うこともあり、「話を聞いたり、自分の経験をもとにアドバイスしたりして力になれたら」と支援員を務めることを決めました。
  今はインターネットなどからさまざまな情報が得られる情報過多の時代。正しい情報の選別が難しくなっています。子どもの聞こえや家庭の状況によって、進学先や療育のあり方は変わってきます。それぞれの状況に合わせて自分たちでより良い選択をするために、「確実な情報を提供したい」と考えます。
  相談はもちろん、保護者同士の交流の場も計画中。雑談に来る感覚で「きき」を訪ねてほしいと願っています。「聞こえていても聞こえていなくても、子育てにはそれぞれに悩みはあります。子どもにとって、家族が笑顔でいるのが一番」と呼び掛けました。
鳥取聾学校幼稚部の子どもたちとヒマワリの写真
子どもたちが種を植え、水やりして育てたヒマワリ(鳥取聾学校幼稚部)

きこえない・きこえにくい子どものサポートセンター「きき」
【所在地】 鳥取市桜谷173-21
【開所時間】 午前9時から午後5時(土・日・祝日を除く)
電話 0857‐50‐0170 ファクシミリ 0857‐50‐0176
https://torideaf.jp/kiki

【問い合わせ先】 県庁子ども発達支援課
電話 0857‐26‐7865 ファクシミリ 0857‐26‐8136



 

 

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