答申第26-2号

答申第26-2号

                                                              平成27年2月6日

第1 審議会の結論

 実施機関の決定は妥当である。

第2 本件審査請求に至る経緯

 平成26年7月 6日(7日受理) 公文書開示請求
 7月18日 公文書開示請求拒否決定通知
   7月21日 行政不服審査法第5条の規定による審査請求

第3 開示請求の内容等

1 開示請求の内容

 (1) 平成26年6月20日、国道9号線 鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線にて申出人が毎時77km速度超過の根拠となる保存文書
 ※ 鳥取県警察本部が送致すべき証拠書類となるものすべて。業務日報等、文書表題に係わらず速度超過違反の内容の記載があればよい)
 (2) サーバー経由のバックアップ保存がない状況での交通取締の告知すべき速度が証拠書類となりうる根拠書類
 ※ 施行令・施行規則・判例・通達等内部規律をまとめたものでも可
 (3) 上記当該交通取締において使用された計測機器についての書類。
      1 メンテナンス等の点検成績書
      2 測定誤差の範囲(精度)がわかる書類
      3 計測機器取扱説明書の現地での設置マニュアル部分

2 実施機関の決定内容

・開示請求拒否
〔公文書の件名〕
 (1) 平成26年6月20日、国道9号線、鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線にて申出人が毎時77km速度超過の根拠となる保存文書
 ※ 鳥取県警察本部が送致すべき証拠書類となるものすべて。業務日報等、文書表題に係わらず速度超過違反の内容の記載があればよい)
 (2) 上記当該交通取締において使用された計測機器についての書類。
  1 メンテナンス等の点検成績書
      2 測定誤差の範囲(精度)がわかる書類
      3 計測機器取扱説明書の現地での設置マニュアル部分

・部分開示決定(当該決定に対して審査請求は行われていない。)
〔公文書の件名〕
   サーバー経由のバックアップ保存がない状況での交通取締の告知すべき速度が証拠書類となりうる根拠書類
   ※ 施行令・施行規則・判例・通達等内部規律をまとめたものでも可

3 実施機関の開示請求拒否決定の理由

 鳥取県情報公開条例第12条第5号に該当
   当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号の非開示情報を開示することとなるため。

第4 審査請求の理由

 本件において、鳥取県警察本部長は開示拒否理由について、鳥取県情報公開条例第12条第5号に該当としている。
 しかしながら、『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』では次のように明記されている。
    第12条 第2 解釈・運用 2
    本条により開示請求を拒否するときは、第7条第1項の規定に基づき決定を行うこととなるが、これは行政処分であって、争訟の対象となるものであり、必要にして十分な理由を提示することが義務付けられる。本条の適用は、あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない。
 この文言をそのまま受け止めれば、上記開示請求拒否決定があった該当公文書については、すべてにおいて鳥取県警察における条例の拡大解釈および条例の濫用と思料される。
 理由は次のとおりである。

 (1) 公文書の存否だけで鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号の非開示情報(すなわち個人を識別されうる)部分を含んでいるとするが、存否だけでは個人情報が識別されるべき状況にはならない。

 (2) また個人情報が識別されるなら、部分開示決定であってもなんら問題のないはず。

 (3) 第12条の解釈によっては「行政処分であって・・・必要にして十分な理由を提示することが義務づけられる」とあるのに、拒否決定通知書にはなんらの理由の提示もなく、義務違反である。

 (4) 刑事訴訟にかかる部分を一律に開示拒否するのは不整合。「・・・あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない(義務規定)」であるにもかかわらず、鳥取県警察の自己の解釈(個人情報等を守るべき保護法益)が部分的に存在するからといって、なんらの具体的な検証もせずに、一律に開示拒否すべきことは、行政庁の怠慢である。

 (5) 鳥取県警察は、鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号の非開示情報(個人情報を守るべき保護法益)を理由としてあげているが、申立人(刑事訴訟の被告)の利益との比較衡量した説明にも一分も触れていない。
 『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』第9条第2項第2号(個人に関する情報)関係 第2 解釈・運用 8では「・・・公にすることが必要であると認められる情報に該当するかどうかは、非開示とすることにより保護される利益と開示することによりもたらされる利益とを比較衡量して判断することとなる。」とあるが、拒否決定通知書からは開示すべきか否かの個人情報に留意し、申出人の利益が、ことさら無視されている感が否めない。
 以上、鳥取県情報公開条例の趣旨に立ち返り、情報公開の全部非開示が正しいのか再度厳密に審査されることを望む。
 また、拒否の理由として鳥取県警察本部が第12条第5号を提示しておられるのであれば、条文の解釈にある「・・・必要にして十分な理由を提示することが義務づけられる。本条の適用は、あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない。」を文言どおり遵守し、最低限、申出人が納得のいく十分な説明および理由を附していただきたい。

第5 実施機関の説明とそれに対する審査請求人の意見

1 本件請求の対象公文書について

 本件請求は、特定の個人が、鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線において、毎時77kmの速度超過の交通違反で検挙された際の関係書類と同取締りに使用された計測機器に関係した書類の提出を求めていると認められる。
 したがって、本件請求の対象とされた公文書について、当該公文書の存否を答えるだけで、特定個人が、交通違反で検挙された関係者であるか否かの事実を答えることと同様の結果になると認められる。

2 開示請求拒否とした理由

(1) 鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号該当性について

 鳥取県情報公開条例(以下「条例」という。)第9条第2項第2号は、個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。第12条1号において同じ。)であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあるものについては、同号ア、イ、ウ、エに該当する情報を除き、これを非開示と規定している。
 本件請求の対象とされた公文書に対して開示、不存在等の決定を行うことは、特定の個人が交通違反で検挙となったか否かの事実を答えることと同様の結果となり、これは、個人に関する情報であって、特定の個人が識別される情報であると認められるので、条例第9条第2項第2号に該当する。
 また、条例第11条に、条例第9条第2項の規定にかかわらず、開示請求に係る非開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、当該公文書開示することができると規定しているが、本件請求に係る個人情報は、特定の個人が交通違反で検挙となったか否かの情報であり、その性質から一般的に他人に知られたくないと考える匿名性の高い情報である。したがって、本件請求において、これを非開示とすることによって保護される個人の権利利益と開示されることによって確保される公益を比較しても、開示することによって確保される公益が、非開示とすることによって保護される個人の権利利益に優越する特段の事情は認められない。

〔審査請求人の意見〕

 本件の申立人は、交通反則制度を利用せず、自らの潔白を証明すべく刑事訴訟法の道を選択し、訴訟の被告となることが予定されている。
 刑事訴訟法305条における証拠書類として、倉吉警察署が自己に都合よく書類を解釈していないかを確認することは、申立人に前科がつくかどうかで、非常に重要な要素となりうる。
 また、申立人は審査請求において「(2)個人情報が識別されうることが問題であれば、部分開示決定であってもなんら問題のないはず」と主張している。
 鳥取県公安委員会は、本件請求において、これを非開示とすることによって保護される個人の権利利益と開示されることによって確保される公益を比較しても・・・開示による個人の権利利益は、非開示の権利利益に優越しない、と結んでいる。
 しかしながら、上記のとおり、申立人はゆくゆくは判決の内容を左右するものとなりうる自己の訴訟の証拠書類として情報公開を求めているのである。本件、証拠書類の開示は刑事裁判全体にも言える、被告の尊重すべき権利となりうる。他の人間とのプライバシー権との折衝があるのであれば、申立人は、「他人の個人情報はまったくもって利用しない」との意思は、主張からも明らかである。
 鳥取県公安委員会は、申立人の情状を酌量し、開示拒否決定ではなく、部分開示決定でも対応可能である。
   よって、文章末尾の「特段の事情は認められない」という理由はまったく承認できない。

(2) 公文書の開示請求拒否について

 例第12条第5号は、公文書の存否の事実により特定の情報の存在が明らかになる開示請求があった場合で、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、公文書の存在を明らかにしないで、開示請求を拒否することが出来る旨を規定している。
 本件請求の対象とされた公文書については、その存否を明らかにするだけで、条例第9条第2項第2号に該当する非開示情報を開示することとなるため、公文書の存否を明らかにしないで本件請求を拒否した開示決定を行ったものである。

(3) 本人による自己の情報の開示請求について

 条例に定める情報公開制度は、条例第5条に「何人も、実施機関に対して、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。」と規定されている。
 したがって、情報公開制度は、何人に対しても、目的いかんを問わず開示請求を認める制度であるが、請求者の自己の情報であることを理由に特別に行政文書の開示を受けることまで認められているものではない。

〔審査請求人の意見〕

 理由説明書では、情報公開条例第5条における解釈を「情報公開制度は、何人に対しても、目的いかんを問わず開示請求を認める制度であるが、請求者の自己の情報であることを理由に特別に行政文書の開示を受けることまで認められているわけではない。」と説明しているが、解釈の根拠が不明である。自己の都合のいいように解釈しているため、承認できない。

3 その他

 本件公文書開示請求書は、郵送されたものであり、審査請求人に対して、当該公文書の開示請求方法等について確認するため電話連絡したが、連絡がとれず、個人が特定されないような書き方での請求方法及び個人情報に係る公文書の開示請求は個人情報開示請求で請求可能である旨を教示できなかった。
 そのため、決定通知書を送付する際に、公文書開示請求書の記載方法及び個人情報開示請求に関する説明文書を同封し、送付している。

第6 本件審査請求審議の経過

 平成26年8月29日 諮問書を受理
 9月26日 実施機関が理由説明書を提出
 10月5日(6日受理) 審査請求人が意見書を提出
 11月18日 審議

    ※  審査請求人は、本審議会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。

第7 審議会の判断

 鳥取県情報公開条例第12条は公文書の存否に関する情報の規定であり、第1号から第5号に該当するときは、公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができる旨を定めている。
 審査請求人は、第3の1の(1)において審査請求人が毎時77kmの速度超過をした根拠となる保存文書を、また、第3の1の(3)においては審査請求人が毎時77km速度超過をした交通取締において使用された計測機器に関する書類を求めている。
 これら公文書について開示等の決定を行ったときは、審査請求人が毎時77kmの速度超過した事実の有無を開示すること、即ち非開示情報(鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号に規定する個人情報)を開示したのと同様の結果を生じることとなる。
   よって、実施機関が鳥取県情報公開条例第12条第5号を根拠に開示請求拒否の決定を行ったことは、適切な判断といえる。
 なお、これら情報は、個人情報開示請求であれば開示されたものと考えられるが、実施機関は、審査請求人に対して架電と説明文書の送付により当該事項の教示に努めており、開示に係る事務に問題はなかったものと考える。

  

最後に本ページの担当課    鳥取県 地域社会振興部 県民課
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