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住民監査請求の結果(却下)

令和4年12月28日に地方自治法第242条第1項に基づく鳥取県職員措置請求(住民監査請求)が提出され、令和5年1月13日に開催した監査委員協議会において審査を行った結果、地方自治法第242条に規定する住民監査請求の法定要件を具備していないことから、請求の一部について補正を求めることとしました。これにより、請求者から1月27日に補正書が提出され、1月31日に改めて監査委員協議会を開催し審査した結果、法第242条に規定する住民監査請求の要件を欠くと認め、却下しました。

  

1 請求の要旨

鳥取県知事の著書『鳥取力-新型コロナに挑む小さな県の奮闘』については、鳥取県職員の指示により担当部署が原稿の確認等を行った。

同書の印税等その利益は知事個人に帰するものであり、同書に関する事務は鳥取県の業務とはいえないところ、指示はいずれも地方公務員法第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)により第35条(職務に専念する義務)に反する行為を職員に強要するものであるから、法人としての鳥取県の業務を妨害し損害を与えたことは明白である。

よって鳥取県は、指示に従事した職員の所要時間分の人件費(給与、共済費等)及びその他に必要とした経費を、民法第709条(不法行為による損害賠償)に基づき、同知事に請求すべきである。

2 補正を求めた事項と回答

(1)誰が、いつ行った財務会計行為を監査の対象としているのか示すこと。

回答:監査の対象となる財務会計行為

鳥取県知事が

ア 2021年1月12日から同18日までの間、広報課を通じて職員に行わせた著書の記載内容の確認、修正作業

イ 2021年2月1日から同月5日までの間に広報課を通じて行わせた、アの内容の確認、修正作業

ウ 2021年2月1日から同月5日までの間に広報課を通じて行わせた、著書に登場する67人への記載内容の確認及び住所等の連絡先が不明な15人の住所等連絡先の提供

(2)その行為は、地方自治法第242条1項に示された事項のどれに該当すると認められるのか示すこと。

回答:怠る事実(不当に公金の賦課を怠る事実)

(3)その行為が違法若しくは不当である根拠を示すこと。

回答:・(1)の行為は、鳥取県知事の私的な著作に関わる行為であり、勤務時間内に行われた場合(時間外勤務手当が支払われる時間に行われた場合を含む)、地方公務員法第35条(職務に専念する義務)に違反すると思われる。

・住所等の連絡先が不明な15人に対して行われた確認は、地方公務員法第34条(秘密を守る義務)「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。」いわゆる職務義務違反にあたる可能性もある。

(4)その行為によりどのような損害が発生しているか示すこと。

回答:本来、鳥取県知事が私的な費用により、秘書担当による依頼や各部担当者への確認・修正作業を私的に依頼すべきところ、県の職務として行われたために(1)の行為に対して支給された給与や、機械器具の損料、電気代等は、県の損害となっている。

(5)不法行為により県に損失を与えた者への損害賠償請求は住民監査請求の対象外である。(1)で示した違法若しくは不当な財務会計行為に応じた措置について精査し、求める措置を示すこと。

回答:県は、各部局に照会して、(1)の行為に要した時間と、従事した職員の人件費単価から所要額を計算して、鳥取県知事に請求すべきである。

(6)(1)についての事実証明書を添付すること。

提出なし

3 却下の理由

 請求者が述べている請求の趣旨は、個人としての平井伸治氏が、職員を通じて不当に県の業務外の行為を県の職務として行わせ、または違法な行為を県の職員に職務として行わせたことにより、当該職務として行わせた行為への対価としての給与及びこれに伴う共済費等及び当該行為の実行に要した諸経費を県に支出させ、県に損害を与えているので、県知事としての平井伸治氏もしくは請求者により特定されていないいずれかの県職員は、県の債権として生じている当該損害の補填を請求すべきであるにも関わらず当該債権の執行を怠っているというものである。

一方、地方自治法(以下「法」という。)第242条第1項に規定する住民監査請求の対象たる「公金の支出」については、法第232条の3に規定する「支出負担行為」、法第232条の4第1項に規定する「支出命令」及び法第232条の4、同条の5に規定する「支出」のいずれかに該当する行為を他の適法妥当な行為と区別できる程度に摘示しなければならないところ、請求者はこれらの類型に該当する行為を違法または不当であるとして摘示しているとは認められない。

また、請求を「怠る事実」として、平井伸治氏個人が私的な費用負担により求めるべき行為を県ないしは県職員の職務として行わせたことにより、民法第709条に規定する不法行為による(補正書においては当該記載はないが、因果関係があるものとの含意があることを否定する趣旨ではないと推定する。)損害を発生させたとしているが、当該損害に対する損害賠償請求権と言った具体的な債権として県が有していると摘示しているとは認められない。

なお、請求者が摘示している「公金の支出に密接に関連する行為」自体については法第242条第1項の「公金の支出」には含まれず、住民監査請求の対象とはならないものであるので、念のため申し添える。以上の所論については、最高裁昭和55年(行ツ)第157号同62年4月10日第二小法廷判決補足意見に基づき決定したものであり、別紙を参照されたい。

 

  [参考]

 ○地方自治法(住民監査請求)

 第242条 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。

 

  

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