古代山陰道は、7世紀後半から8世紀にかけて、律令国家が迅速な情報伝達のために全国に整備した七道駅路の一つです。埋蔵文化財センターでは、青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡、青谷横木(あおやよこぎ)遺跡の発掘調査で古代山陰道と考えられる道路遺構が発見されたことを契機として、調査研究事業に取り組み、昨年度にその調査成果をまとめた報告書を刊行しました。
今回の講座は、調査開始から現在に至るまでの経緯を担当職員が明かします。
ぜひご参加ください。
【講座の概要】
■開催日時:令和5年10月21日(土)の午後1時30分から午後3時まで
■会場:鳥取県埋蔵文化財センター(鳥取市国府町宮下1260)
■定員:会場参加25名、オンライン参加40名
申し込みはこちらをクリックしてください。
↓チラシ画像をクリックしていただくとPDFデータがダウンロードできます。

なお、11月25日(土)には、令和5年度鳥取県埋蔵文化財センター古代山陰道特別講演会「古代山陰道とその未来」を開催する予定です。県内外の古代山陰道をはじめ、古代官道の最新調査成果をご報告する予定です。
こちらもご期待ください。申し込み開始日はホームページでお知らせします。
令和5年8月5日(土)に、奈良文化財研究所都城発掘調査部の主任研究員小田裕樹氏による「奈良時代の娯楽と遊戯」の講演を行い、聴講された皆様から3つの質問をいただきました。
いただいたご質問への講師の回答は、以下のとおりです。
【質問1】
「かりうち」の盤面はすべて転用であるということでした。どんなものでも即席で盤面にできるのが利点ですが、初めから(焼成前から)盤面としてつくっている土器も、今後出土する可能性もありますか?
【回答1】
現在までに確認している「出土かりうち盤面」はいずれも食器や折敷(おぼん)、磚(古代のレンガ)などに刻点や墨書きで盤面を記入しています。土器を焼成する前に盤面を描いた事例などはなく、専用の盤面として作られたものは見つかっていません。
私は、この傾向を踏まえて、身近にあるものを転用し、即席で盤面を作りゲームを始めることができるのが「かりうち」の特徴と考えています。
この私の仮説が正しければ、初めから(焼成前から)盤面として作られた専用品が出土する可能性は低い、と考えています。ただ、まだ出土例が9例と少ないこともあり、今後専用の盤面が見つかる可能性はゼロではありません。専用のかりうち盤面が出土するとしたら、どのような材質でどのような形の盤面なのかとても興味があります。
今後の出土例の増加に期待しています。
【質問2】
土器の列点はかなり小さいものもありますが、そのまま盤面として使っていたのか、それともレイアウトとして(例として)実際には使っていなかった可能性も考えられるのではないか。(たとえば、横に置いて、別に地面などに盤を書くとか)
【回答2】
ご指摘の通り、列点の直径がとても小さい事例があります(平城宮東南隅出土例)。私は、この小さな列点の事例について、遊戯の盤面である可能性と呪術的な記号の可能性を考えています。
まず、遊戯の盤面の場合、現代の私たちでは想像が難しいくらい非常に小さな駒を使用していたことになります。ただこの可能性は低いように思います。
次に、呪術的な記号つまり「おまじない」の記号として使用された可能性が考えられます。
古代において遊戯とまじないの境界は明確ではありませんでした。サイコロなどを振って、采の目を決める遊戯は、その目の出方が運によるものであり、これを神の意志と考えて呪術や占いに使われることがありました。韓国でもユンノリは占いの一種として使われていた(遊ばれていた)こともあるようです。
具体的な使用方法は分かりませんが、この小さな盤面(記号)も「おまじない」などの一環として使われていた可能性があるのではないか、と考えています。
【質問3】
何故廃れたのか。
【回答3】
ご質問はまさに、かりうち最大の謎です。現代韓国では今もユンノリが遊ばれているのに、なぜ日本では廃れたのか?私もまだ納得のいく答えは出せていません。
講演ではお話しできませんでしたが、かりうちは13世紀ごろには衰退しつつあったと考えられます。かりうちが廃れた=遊ばれなくなったということは、人々が面白いと感じられなくなったことを示していると考えられます。とすると、この頃に「別の面白い遊び」がかりうちに取って代わったのではないかと考えています。
私が気になっているのは「将棋」の登場です。
将棋は現代日本で広く楽しまれていますが、奈良時代の日本ではまだ遊ばれていませんでした。現時点では、奈良の興福寺で「天喜六年」(1058 年)銘の紀年資料と共に出土した駒が日本最古の例で、この頃に将棋が遊ばれ始めたと考えられています。
将棋が日本に伝来し普及する時期とかりうちが衰退しつつある時期が重なることから、私は将棋の普及・流行に押されて徐々にかりうちが遊ばれなくなったのではないか、との見通しを持っています。
ただ、まだ検討が不足しており推測の域を出ません。今後も出土資料をはじめとして、様々な視点から検討をしていきたいと思います。
令和5年8月5日(土)に奈良文化財研究所都城発掘調査部の主任研究員小田裕樹氏を講師にお迎えし、第3回鳥取まいぶん講座「奈良時代の娯楽と遊戯」を開催しました。(写真1)
はじめに奈良時代の遊戯について、文献や伝世品、考古資料から、囲碁、コマ、木とんぼなど現代まで続く遊びのほか、「かりうち」という今の日本には伝わっていない遊びがあることを教えていただきました。
次に「かりうち」という遊びについて、平城京から出土した土器の中に、列点記号をもつ土器があることに着目し、同じような土器などが各地で見つかること、韓国の伝統的な遊びである「ユンノリ」との類似から古代のボードゲームであることを明らかにした経緯や、「ユンノリ」のルールを参考に、「かりうち」を現代によみがえらせたことなど、韓国でのエピソードなどを交えて楽しくお話しいただきました。
最後に「かりうちプロジェクト」の説明があり、全国の教育機関などで体験できるプログラムを紹介されたほか、将来は旧国単位で代表を決定し、平城宮で大会を開催するという目標も語っていただきました。
参加者は熱心に聴講されており、アンケートでも「楽しく聞くことができた」、「分かりやすかった」というお答えのほか、現在行われている企画展示「古代の遊び」についても、「これから見たい」というお答えが多く寄せられました。
講演終了後は、奈良文化財研究所で復元した「かりうちキット」を用いて実際に「かりうち」を体験しました。(写真2)
▶体験についての動画は、YouTubeをクリックしてください。
次回、第4回は令和5年10月21日(土)に鳥取県埋蔵文化財センターで、「古代山陰道の調査成果」と題して当センターの森本倫弘が講演します。ぜひご参加ください。

(写真1)講演会の様子

(写真2)かりうちの様子
令和5年6月17日(土)に、兵庫県立考古博物館の名誉学芸員である大平茂氏を講師にお迎えし、第2回鳥取まいぶん講座「律令期の木製祭祀具(人形・馬形)-伯耆国・因幡国出土遺跡の特徴-」を会場のとりぎん文化会館第2会議室(写真1)とオンラインとで同時開催しました。
はじめに「木製祭祀具の種類と使い方」についての概要と、発掘調査の成果から古墳時代から古代にかけての祭祀の変遷、都城で6月と12月の末日に行われていた大祓(おおはらえ)と律令制祭祀具が各地域に広がる様子について解説されました。
続いて鳥取県内では、伯耆国の大御堂廃寺跡(おおみどうはいじあと)や大鴨遺跡(おおがもいせき)では、寺院の近くで水に関わる祭祀が行われたこと、因幡国では国庁よりも西側の地域で多数の木製祭祀具が出土するとのご指摘がありました。
大桷遺跡(だいかくいせき)は古墳時代から続く律令制祭祀と、動物をいけにえにする特色ある遺跡であること、青谷横木遺跡(写真2)は木製祭祀具の出土数は兵庫県の袴狭遺跡(はかざいせき)に続き全国第2位であること、青谷横木遺跡や常松菅田遺跡(つねまつすがたいせき)は人形よりも馬形の比率が高く、他の地域と行き来する馬自体が祓(はらえ)の対象になることから、どちらも馬に関係する遺跡の可能性が高いとのことでした。
参加者は熱心に聴講されており、アンケートでも「分かりやすかった」、「知らなかったことが具体的に分かってよかった」、現在行われている企画展示についても、「これから見たい」というお答えが多く寄せられました。
企画展「大桷遺跡(だいかくいせき)の木製祭祀具」は7月28日(金)まで開催しています。
展示については、こちらをクリックしてください。
次回、第3回は令和5年8月5日(土)に鳥取市国府町コミュニティセンターで、奈良文化財研究所主任研究員の小田裕樹氏に「奈良時代の娯楽と遊戯」と題してご講演いただき、講演終了後には実際の古代の遊戯を復元した「かりうち体験会」を実施します。ぜひご参加ください。
募集は7月上旬までに始める予定です。

写真1:会場の様子

写真2:青谷横木遺跡出土の木製祭祀具集合写真
当センターでは最新の調査研究成果を県民の皆さんにお届けする「鳥取まいぶん講座」を開催しています。
講座は年6回を予定しており、ただいま第3回目以降の参加者を募集しています。
チラシ画像をクリックしていただくとPDFデータがダウンロードできます↓

令和5年4月15日(土)午後1時30分から当埋蔵文化財センターの家塚英詞文化財主事を講師に、第1回鳥取まいぶん講座「曲物(まげもの)の世界」を開催しました。会場での聴講とともにオンライン同時配信により開催しました。
曲物とは薄い木の板や樹皮を曲げて筒状にし、合わせ目を樹皮でとじ、底板を取り付けて作ります。今回の講座では、曲物の構造や作り方、使われる木材の種類、現代に至るまでの歴史について、遺跡から出土した資料だけでなく、実際の曲物を例に分かりやすく説明しました。
参加された方の中には、曲物が日本の食文化に与えた影響について興味を持たれた方もありました。
講演終了後は、当センター展示室で講師による「企画展・曲物の世界」の展示解説を行いました。この展示は5月26日(金)まで開催しています。
「企画展・曲物の世界」については、こちらをクリックしてください。

講座の様子

展示解説の様子